分類不能項目


Vol. 21

2007/July/8

盗掘(その1)



私のライブラリーでちょっこと記述した祖父の話です。
この祖父は寒村に生まれ、苦労を重ねて教師となり最終的には小学校の校長となった人物だそうです。私は生活していた場所が祖父と離れており(祖父は函館在住)私は全国を転々としていました。あまりじっくり話をしたという記憶はありません。結構博学で好奇心旺盛だったらしいという事は聞いております。

私が中学生か高校生の頃の話です。何年ぶりかで祖父の家に立ち寄った事がありました。その頃祖父は「日本刀」を購入したとの事で、私は本物の「日本刀」に触れてみたくてせがんで見せてもらいました。その時、初めて祖父の部屋?というか趣味の部屋?に入りました。
 日本刀の他に古い書物がたくさんあったような気がします。それよりも何よりも部屋の奥に陳列台のようなものが作られており、そこになにやら飾ってあります。
何だろう?と見てみるとナントそれらは土器や石器なのです。石器はキレイに磨かれたいわゆる磨製石器です。長さは30cmくらいあったでしょうか、何に使用したものか今では思い出せまんが記憶では白っぽい石器だったような気がします。その他にもいくつか石器や土器が並んでおり、きちんと注釈が付けられていました(内容は忘れた)

なんでこんなものがあるの???
古物屋で購入したわけでもなかろうし、祖父に尋ねてみると「自分で発掘してきた」とのことです。
えー!!?自分で発掘したの??一体どこで?と尋ねても函館近辺という事は分かっても地名を言われても分かりません。まあ当時70をとうに過ぎていた祖父がそんなに遠くまでいけるわけもなく函館近辺だったのでしょう。

年代的には石器であるという事から有史以前だったのかもしれませんが、案外北海道は金属が伝わったのは本州よりも遅れていたはずなので比較的新しいものかもしれません。
 (蛇足ですが、関東でも奈良時代あたりはまだ竪穴式住居が使用されていたそうです。)

で、欲しがり小僧の私は「ちょーだい、ちょーだい」と祖父にせがんで、おすそ分けしてもらいました。

これがそうです。



これは打製石器です。おそらくナイフとして使用したのでしょう。右手で持つとぴったりするので、右利きに人が使用したのでしょう(私は左利きなので気になるのです)。意外と小振りで私の手には少し小さ過ぎるような気もします。考えるに当時の人々の身長が150cm前後、もしくはそれ以下(私は180cmあります)であったろうと思うとそれほど小さくないのかもしれませんし、もしかすると持ち主は女性だったかも知れないなどと、どんどんと想像が膨らみます。
 年代は分かりませんが磨製石器よりは古いことは間違いはないでしょう。1万年くらい前ならば当時北海道は大陸と地続きだったので、可能性として北方のマンモスのような大型動物の解体に利用したかもしれない等と勝手に想像してしまいます。


右手で持つとピッタリします。意外と小さい

こちらの小さいものは黒曜石でつくられています。真ん中のものは先端が尖っていますが矢じりにしては小さ過ぎるよるです。何かに穴を開ける目的で使用されたものなのでしょうか?一番左側のものは鋭利な断端を持つのでちょっとした小物を切断するときに使用したのでしょうか?

先ほどの石器(一番右側)と並べてみました。


 その後祖父は亡くなり、同居していた伯父が管理していたはずですが家を建て直した事もあり、今はどこにしまってあるのか伯父もよくわかっていないようです。

 先日父親の法事であったときにこのことが話題になりました。
「あれって、いわゆる遺跡の盗掘にならないのですか?」と尋ねてみたら
「そうだなー、そうなるんだろうなー」と呑気なお返事。
「でも、あのような石器などを返還(?)しようかなと思って、しかるべきところに問い合わせても『そういった問い合わせが多過ぎて管理できない』と言われちゃったんだよねー」とのことでした。

まあこんなものかもしれませんね。確かに我々が使っているスプーンも1万年後には「過去の貴重な文化財」となるのかもしれませんが、、、。祖父の遺品には明治時期の錦絵のようなものや、他にも面白そうなものが色々あったと思います。もし訪問する機会があったらガサガサと家捜しをしてしまいそうです。