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その10

小学館 交通の図鑑
(1966)

   

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今回は「小学館版 交通の図鑑 です

 

これは前回の 「講談社版 交通の図鑑」を入手する前に間違えて入手したものです。ですから子供の頃に読んでいたわけではありません。

奥付を見ると初版は昭和31年(1956)となっていますが改訂されおり実際に購入されたのは昭和41年(1966)となっています。なぜわかるかというと裏表紙に購入者のサインがあったからです(後述)

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表紙は講談社版と同様に当時の日航の主力機である「ダグラスDC-8」の機影が描かれています。尾翼には当時の日航のマークが鮮やかです。
 ただ初版発行時の昭和31年には、まだこの機体は実用化されていなかったので、この表紙は改訂された際に新たに書き下ろされたものではないかと想像しています

見開きは定番の未来の交通図です。
 空にはやはり「原子力旅客機」が飛行しています。この頃は未来のエネルギー源としての「原子力」への期待がいかに大きかったかが推察されます。

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当時は未来に無限の夢を抱いていたような気がします

海には原子力客船(これは当時、実用化されていました)。さらには場違いのように「原子力潜水艦」が停泊しています。船舶の動力としての原子力は現在では軍用に限られていますが当時は民間でも利用拡大が期待されていたのがわかります

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右側に客船と原子力潜水艦が並んでいるのがなんだかすごい

未来の地上交通です。車輪のない「エアカー」が走行しています。私の幼少期は確かに未来の自動車は浮遊する「エアカー」であることがお決まりでしたが未だに実用化される気配はありません。
 モノレールは実用化されていますが限定的ですね。地下鉄が走っていますが車両が旧型の丸ノ内線であるのがご愛嬌です

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左奥には服部時計店の時計台が見えます。周囲のビルもそれほど大きくありません。高層ビルという考えはなかったのかなあ?

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宇宙関係はこの見開きのみ。「イオンロケット」だそうです。それって現在の「はやぶさ」に通じるものがあるかも?

さて、この本を見て気がついたのですが、講談社版が「陸海空」と3つの交通機関を淡々と紹介しているのに対し、小学館版はまずに「交通の歴史」からはじまっており、ここで20ページ以上費やしています。講談社版が現代(当時の)の交通機関の説明に終始しているのに対し、小学館版はあくまでも「学習」することが理念にあるように感ぜられました

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最下段右の「担いで運ぶ」が「コロを使って運ぶ」になり次第に車輪を利用し、さらに動力を利用する過程が描かれています。でも普通、最初に原始時代を描いて次第に進化していくように描くと思うのですが、ここでは現代から過去へと遡っていく風に描かれています

old traffic

江戸時代の交通図だそうです。なかなか教育的です

 「交通の歴史」も結構読み応えがありました。今読むとなかなか面白いですが当時の小学校入学前後の私には果たして理解できたか少し疑問も残ります。
20数ページに渡る「歴史」解説の後にかく交通機関の解説に移ります


 ここでも面白いことに 講談社版が 空―鉄道―自動車―海 の順に比較的均等に掲載しているのに対し、小学館版は 鉄道―自動車―海―空となっています。しかも鉄道に関するベージは30ページ近くあるのに対し海上交通は10ページ足らずと全然違います。

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「新しい列車」当時の花形である「0系新幹線」が誇らしげに描かれています。新幹線が実用化されたのは昭和39年(1964)のことであり、初版発行時には存在しておらす、この図は改訂を重ねた時に書き加えられたのでしょう

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外国の機関車、流線型に変わる車の型とあります。右の図に注目してください

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最初の3台がカラーなのに、一番下の新幹線だけ「白黒」になっています。これは明らかに後で差し替えられたものですね。調べてみたら当初は「新幹線と予想される車両」が描かれていたようです。このことからも当時の「新幹線」のインパクトがいかに大きかったものか伺われます

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講談社版でも見られる「機関車のしくみ」こちらの方があっさりと解説されています
でも絵は小学館版の方がきれいです

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電化を進める理由、一番右の「らくだ」!なんてストレート過ぎる表現です

 

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「かげのちから」私の気に入ったページ!基本は人力です。ゲートルを巻いた作業員が働いています。ヘルメットではなく帽子をかぶっての作業です。素手で作業しているようにも見え、作業員自身の安全確保が心配です

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「このようにして」といわれてもよくわかりません。とにかく頑張れ!

 


 おそらく読者である子どもたちが一番身近で人気のあると思われる「鉄道」に力を入れたのではなかろうかと思われます。このへんは商売上手ですね

自動車に関しては特に詳しくというわけではなく、かと言って簡単というわけでもなく、ごくごく普通に組まれた印象です

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「新しい自動車」と言っても今となってはクラッシクカーです。トヨタスポーツ800などがあります

自動車保有台数

「昭和39年(1964)当時の自動車一台あたりの人口」、日本は73.1人に一台だそうです。現代からすると信じられない数字ですね(中国なんて3000人に一台!!)


 海上交通に関してはその分見劣りがして、あっさりと終わっています。なんだか船舶が気の毒になるくらいです。

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お決まりの断面図もあっさり

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多くは白黒ページでさらりと流します

 

 航空機は最後の項目になっており、特にページ数が多いわけでもありませんが、後半の解説が充実しているようです。おそらく改訂のたびに航空機の比重が増えていったのかもしれません

DC8

小学館版もDC-8の解説がありますが講談社版ほどではありません

airplane

左ページの左側上から3番目のB52爆撃機、5番目のC130輸送機は未だに現役です

エンジン

「エンジンのいろいろ」それらしい解説があり、理解できたような気になります

 

 

speed


「スピードくらべ」鉄道が「汽車」、「こだま」なのがご愛嬌、右下に「新幹線は現在は時速最高200kmです」とあります。これも現在は「時速270km」までアップしています。ついでに「DC-6」はプロペラ機でありジェット機ではありません

後半はペラペラの紙質の解説ページですが、これが結構ためになります

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昭和38年(1963)当時の舗装率。日本はわずかに3.1%。昭和38年といえば私は千葉県市川市に住んでいましたが周囲は未舗装路ばかりで大通りだけが舗装してあったような記憶があります

traffic accident

「交通事故」当時の急速な発達に道路事情その他がついていかず事故が多発していたことがわかります。「毎日35人が死んでいる」とありますが、一年にすると12000人以上死亡していることになります。これは現代よりも遥かに大きい数字です。当時は「交通戦争」と呼ばれていた記憶があります

truck

トラック輸送のほうが鉄道輸送よりも運送時間が短い理由は「鉄道の方は貨物の積載、配達時間が余分にかかる」ことがあげられています。当時からトラック輸送が急激に伸びてきていたのです。それにしても東京から名古屋まで一日以上かかっていたのですね(この当時はまだ高速道路は開通していませんの一般道路を走行したものですね)

こうやって見ていると小学館版は講談社版が「見て楽しむ」要素が強いのに対し、「読んで楽しむ」割合が多いような気がします。どちらが良いかは分かりませんが配分割合などを見ると小学館に「商売がうまい」印象があります

 

最後に裏表紙に購入者の氏名と住所が記載されていました

kasiwagi
東京都新宿区柏木 1-x-x
x谷x也
昭和41年12月とあります

購入した親御さんが書いたものと思われます。
この新宿区柏木という地名は現在存在せず、現在の新宿区西新宿のあたりとなります。調べてみたところ現在の新宿大ガードからやや南西のあたりが当時の「柏木1丁目」だったようです。
 現在この一帯は一般住宅は少なく、おそらく当時の所有者は現在も同じ場所に住んでいる可能性はかなり低いと思われます。この本はもしかすると「柏木」を去るときに処分されたものかもしれないなあと想像したりしてみます。

 もしかつての所有者がご健在でしたら一体どのような思いをしてこの本を読んでいたのか尋ねてみたいものです 

 

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