分類不能項目


Vol. 80

 

2025. Sep.15

 さよなら自転車




 先日、古い自転車を処分した。その自転車は20年以上前の開業時に、「往診用」に購入したものでした。開業当初で節約のため中古のものを安く購入したものでした。中古ながら近所の在宅診療に大いに活躍してくれました。昼休みなどを利用して連日駆けずり回ったものです。最長で21日間連日往診したことがありました。中古のシンプルな自転車でしたがトラブルもなく良く走ってくれました

一度盗難にあったことがあります。クリニックの前に置いておいたら、いつの間にかなくなっていたのです。盗まれたんだなとがっかりしましたが、なぜか数日したら戻ってきておりました。

 もともと私はがん化学療法を専門としていたためか訪問先は「末期がん」の患者さんが多く、担当して数か月で亡くなることがほとんどでした。その一方、最長で16年訪問した方もおられました。
  そんなこんなで頑張ってきました。当初は近隣に訪問クリニックなどはなく、依頼されることが多かったのです。おそらく他の開業医の先生方もそうして頑張っていたのではないでしょうか?


 そうして何年か経過しているうちに「訪問クリニック」が出始め、特に何かしらで入院されていた方が退院となり在宅医療へ移行するときには、退院の時点で「訪問クリニック」に紹介されることが増えてきたようで当院への依頼は減っていきました。まあもっともこれは当方の力量不足のために依頼されなくなったのかもしれませんが。

 その後も細々と訪問などを続け自転車で走りました。自転車もキーキーきしむようになってきました。しかし最近は定期的な個人宅への訪問診療は皆無となり、かかりつけの患者さん宅にたまに往診する程度となり、それもそのうち滅多になくなりました。
 出番のなくなった自転車はたまに油をさしたりタイヤに空気を入れていつでも動けるようにはしていましたがほとんど置物と化していました。


 開業して20年以上経ち私も高齢者の仲間入りし、24時間対応は無理と思われ、それに従い自転車の出番もなくなりました。そうした流れで自転車を処分することとなりました。もう個人の開業医が訪問診療をする時代ではなくなったのかもしれないと思いつつ、20年以上付き合ってくれた自転車ですがお別れとなりました。さよなら中古自転車、どうもありがとう。