院長のひとりごと

当初は、もう少し花鳥風月を愛でる話や、世相を風刺するようなことを書いていこうと思いましたが、いつの間にか情けない話ばかりになっています。かといって愚痴めいた話はいやなのでこのペースが続きそうです


院長のひとりごと その98

May 1. 2019
 

平成から令和へ

 

本日から令和となりました。テレビを見ていると、どの番組も皇室一色。こんなのは昭和天皇崩御以来かなあなど思っていたら、かつてのことを思い出しました。

あれは昭和64年1月7日のことでした。当時私は研修医として国立東京第二病院(現在の国立病院機構東京医療センター)の研修医として働いておりました。ちょうどのその頃は研修医の恐怖となっていた救命救急センターでの研修をしておりました。何が恐怖かと言うと当時、救命センターはわずか5週間の研修だったのですが、内容がブラックそのものでした。なにせ5週間センター内に泊まり込み(センター内の小部屋にベッドが置かれていた)センターから出られるのは食事、トイレ、洗濯、風呂だけで、後はひたすらセンターにとどまるものというものでした。そもそも、これは救命センターが組織としてまだ成熟したものではなく、とりあえず「24時間医師がいる」ことを目的として作られた制度でした。そのためセンター常勤の医師というものはおらず、各科から適当に?医師が集められるという代物でした。したがって上級医はいつもいるわけではなく、要するにいつもいるのは研修医だけであり「研修医は24時間働け、お前らは修行中のみなのだから文句は言うな」というものだったのです(現在は改善されているはず)。


 そんな訳でローテーションでセンターを回るのですが、ローテーションを終える頃にはヘトヘトとなり、私も最後の一週間は動悸が出てくるくらいでした(やはり無茶だったらしく、間もなくこの取り決めはなくなったようです)

 毎朝、朝6時前に起きて救命センター入院患者さんたちの動脈血を採取して血液ガス分析というものを行ってデータをまとめるというのが日課でした。
 その日も眠い目をこすりつつ、人数分の動脈血を採血し、検査室に持っていって自分で機械を操作してガサゴソやっていると、たまたまついていたテレビから「天皇陛下が崩御されました云々」の報道がなされました。
 (こうやって書いているうちに思い出しましたが、当時国立病院は労働組合が強かったためか時間外の検査は検査科でやってくれず、すべて研修医が機械を操作しておりました。研修医がいなければデータが出ないなんてヒドイですね)

 「へー、とうとう亡くなったんだ」と大した感動もなく、データをまとめセンターに戻りました。
 世間の騒ぎも知らず、淡々と仕事を行っていました。だって外出できないしテレビもろくに見ることができないので世の中の動きに疎くなるのです。

 たまにテレビをつけると、どの局も延々と昭和天皇に関する番組をやっています。来る日も来る日も天皇関係の番組ばかりです。ただ東京12チャンネル(今のテレビ東京)だけは天皇関係の番組はやっていませんでしたが、これは単に局の制作力がなかったためのようで、何故かゴルフ番組などを放映しておりました。

 外の世界は喪に服して半旗をかがげているとのことですが、外に出られないのでわからない。街なかは静かになっているのかどうなのかも全くわかりません。他の研修医たちから世間の様子を聞いても、実感がわきませんでした。
 
 元号に関しては崩御の当時の午後に「次の元号は平成」と発表され、「やはり先に決まっていたんだなあ」としか思わず、元号の由来などを気にする人もなかったと思います

 私はと言うと崩御や元号なんて言うものは、どうでも良くなっており、ひたすら仕事をこなす日々でした。重症患者が運ばれてくると気管内挿管を行い点滴ルートを確保し、心マッサージ、必要あらばカウンターショックなどの処置を行うという一連の行為をひたすら行う日々でした。ひたすら肉体労働?であり、こんな研修でいいのかなあ?と疑問をいだきながらのセンター勤務でした

 センターでの研修が終わった頃には世間は普段どおりの佇まいでした。私は外出できるようになったことが嬉しくて嬉しくて、さっそく近所のカレーショップにカレーライスを食べに行ったことを覚えています

 というわけで昭和から平成にまたがる時期のことは大変だったことばかりが思い出される日々なのです。
今回の令和に変わって、テレビでは相も変わらず皇室関係の番組のオンパレード。もう飽きました。

 皇居前などのインタビューでは皇室のお言葉に対して「感動しました」とか「思わず涙が出ました」などのコメントが流れています。見ると結構若い方がこのようなコメントを出している。「ふーん、自分よりも若い人たちがこんなコメントするんだなあ」と奥さんに話すと「それはあんたが単に皇室に関心がないからだけよ。そもそも皇室に思い入れがある人たちが皇居に行くのだから、あのようなコメントになるのは当然よ」とのご意見。
 なるほどなるほど、至極納得したのでした

なにはともあれ平成は終わりました。さてこれからどんな時代になるのでしょうか?