院長のひとりごと

当初は、もう少し花鳥風月を愛でる話や、世相を風刺するようなことを書いていこうと思いましたが、いつの間にか情けない話ばかりになっています。かといって愚痴めいた話はいやなのでこのペースが続きそうです


院長のひとりごと その82

November.22.2014

ブレークスルー
 


 なにかというと長年行ってきた胃透視検査を止めることにしました。胃透視検査というのはいわゆるバリウムを飲んでもらって行う胃の検査のことです。

 なぜかというとこの検査は当院ではもっぱら市民健診で胃透視を希望する方に行っており、一般外来患者さんに行うことは無くなったからなのです。一般の消化器症状を訴える方で検査が必要と思われる方は最初から内視鏡検査を勧め、紹介しているからなのです。
 市民健診にしても月に一名行う程度であり、しかも4月から健診において「胃透視」は行わなくなり、それに代わる「ABC検診」というはるかに簡単な検査に置き換わったのです。
 要するに4月から当院では胃透視検査はゼロとなりました。

 そこで胃透視検査は廃止とし、それに必要なアナログX線透視装置という機械を単純なデジタルX線撮影装置に入れ替え、レントゲンフィルムを使用しないで済むようにしました。そうするとフィルムの現像が不要となり現像室が要らなくなります。その要らなくなった現像室を改装して感染症患者さんなどを隔離するための隔離室にすることにしました。

 思い起こせば胃透視の技術は今の若いドクターはできる方が多くはないと思います。私の世代も全員ができるわけではありません。私は四半世紀以上前の研修医の時代、消化器をローテートした際に学ぶ機会があり修得することが出来ました。ついでに言えば、その後さらに希望して下部消化管、いわゆる大腸二重造影法も修得することが出来ました。その技術は大学でも派遣病院でも結構使うことが多く我ながら重宝したものでした。「苦労して学んでよかったなあ」と思う反面、内視鏡検査の普及を見るに連れ「時代遅れになりつつある」という思いもありました。
 
 12年前、開業するにあたり、単純X線装置にするか胃透視が行える透視装置のどちらかを選択する時は結構悩みました。なにせ価格が結構違うのでした(当然透視装置のほうが高価)。それでも検診で需要があること、内視鏡検査を行わなくてある程度の消化器疾患の検査として十分役に立つことなどから敢えて透視装置を選択したのでした。
 開業当初は胃透視検査は結構行いましたし、それなりに役に立ちました。しかしながら周囲に内視鏡検査を導入する開業医も増え、相対的に胃透視の頻度は減り前述したように最近は一月に一人程度検査を行う程度で4月以降は透視装置としては使用しておらず、単純X線撮影ばかりとなっていました。

 現在の若い医師はおそらく内視鏡検査を学ぼうとすることはあっても胃透視を積極的に学びたいという方は殆どいないのではないと思います。習得にはそれなりの時間がかかるし、異常を認めれば結局は内視鏡検査で精密検査を行うので、それならば最初から内視鏡検査を習得したがるのは当然でしょう。      
 
 胃透視の技術は職人芸的なものがり、達人が行うと本当に「素晴らしい」と思うような画像を目にしました。残念ながら私はそこまでは至っておりません。せいぜいスクリーニング的なレベルでした。それでも30年近く行ってきた検査を止めるというのは、なんとなく寂しい気もします。でもまあこれが医学の進歩というものなのかもしれません。 

 自分が苦労して習得した技術が過去の遺物となっていくのです。おそらくもう二度と胃透視、大腸検査を行うことは無いかと思われます
でも私はまだまだ学ばねばならぬことがあり、感慨にふけっている余裕はないのです。
 
医者って、いつまでたっても勉強が必要なんだなとつくづく思う今日このごろです

X線透視装置 - Spherical Image - RICOH THETA

X線透視装置です

X線透視操作盤 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

透視装置操作室です

いずれの機械も現在撤去されています