当初は、もう少し花鳥風月を愛でる話や、世相を風刺するようなことを書いていこうと思いましたが、いつの間にか情けない話ばかりになっています。かといって愚痴めいた話はいやなのでこのペースが続きそうです。
院長のひとりごと その75
Dec.23.2010
中学受験
うちのチビスケは今年中学生になりました。色々あっていわゆる「中学お受験」をしました。あんなことやこんなことが多々あって、いまの学校に落ち着きました。
いやあ、結構大変だったなあと思う一方、自分自身のことを思い出してみました。
私が小学生の頃は、その大半を千葉県松戸市で過ごしました。その頃は皆、近所の小学校に通っており、ほぼ全員そのまま公立中学校に行くものと勝手に思い込んでおりました。少なくとも仲の良いトモダチに「中学校を受験する」などということを考えている子は皆無でした。
そもそも、その頃の少年マガジンには当時人気まんがであった「巨人の星」が人気絶頂であり、関連コーナーとして主人公の父親である「星一徹」がキミの悩みにお答えするといったものがありました。星一徹なる人物は当時「スパルタオヤジ(すでに死語)」の鑑のような方でして、主人公を巨人軍の選手にするためには殴る蹴るの制裁は当たり前であり、揚げ句の果てに「大リーグボール養成ギプス」などという今ならばどう見ても「児童虐待」とも思えるものを我が子に装着してしまうという恐ろしい父親なのでした。
その星一徹が読者の悩みに答えるわけです。ですから当然のごとく答えもハチャメチャです。とある男の子が「クラスの女の子を好きになったがどうしたら良いのか?」という質問に対しては
「小学生のくせに女の子にうつつを抜かすなんてとんでもない!わしが父親だったらキミに鉄拳制裁をくらわしてやる!」といった調子の回答でした。
万事がこんな調子でした。ある回で質問者が「ぼくは中学校進学で悩んでいます。母親は私立の一貫校に行けば大学まで心配ないので私立受験を勧めますが、僕はトモダチと一緒に近所の公立中学にいきたいと思っているのですが、ご意見は?」との質問がありました。
星一徹氏は当然のごとく「一貫校などというエスカレータ式に行くところにいくヤツは自分を鍛えることもなくロクな奴にならない。それよりも一歩一歩自分の力で進んで様々な人生修行を積むべきじゃあ!(あちこち記憶が曖昧なので不確かですが)」と私立受験を頭から否定されておられました。
当時純真な?心を持った小学生である私は「そうか、私立受験をする奴なんてロクな人間にならないんだ。公立中学に行くのがヒトの道であって受験なんてする奴はアタマがおかしいんだ!」と勝手に都合よく解釈しておりました。
そんなわけで受験勉強はおろか、日々の勉強もおろそかにして遊び、自分の好きなことに集中している毎日でした。
そんな日々を送っていましたが小学6年生の5月に千葉県松戸市から兵庫県西宮市に引越したのでした。
当然のごとく、近所の小学校に転校となりました。
まあイロイロありましたが、じきにクラスに溶け込むことが出来ました。しかし!一種のカルチャーショックを受けたのでした。
それは「中学受験のために塾に通っている子がいるということでした」
私の頭の中では「塾」というのは学校の勉強について行けない子が授業に遅れないために通うところ、すなわち成績が悪いヤツが行くところであってアタマの良い子が通うところではなかったのでした。
それがクラスで一番成績がよいと思われるクロダくんが塾に通っていると聞いてビックリしたものでした。
相変わらず私は受験何とものは無縁の生活をしていました。受験なんて高校までは関係がなく、だいたい父親の仕事の関係でいつまた転校するかもしれないし(その時点で小学校は3ヶ所目)何も考えないでおりました。
あっという間に月日は過ぎて、卒業も近づいてくるとクラスの中の何人かが私立中学を受験するという話しが伝わってきました。1クラス45人でしたが数人私立中学を受験するとのこと。私には一体何のことやら理解出来ませんでしたが西宮では毎年恒例のことであるらしく当然のごとく周囲も理解しているようでした。
卒業式の当日か、それとも数日前か忘れてしまいましたが担任が贈る言葉をくれたように思いますが。そのときに受験組の結果も教えてくれました。受験組はおおかた志望校に受かったようでした。でもクラスで一番のクロダ君は第一志望校には受からなかったとのことでした。クロダ君が落ちたのは「灘中学」というところでした。
私は灘中学というところがどのようなところか全く知らず「ふーん、クロダ君でも落ちるなんてむつかしい学校なんだなあ」と感心したものでした
関係ありませんが私は近所の公立中学に進学することになり、制服もカバンも購入しました。その直後に再び父親の仕事の都合で引越することになり西宮の中学校に行くことはありませんでした。しかも再び松戸に戻ったので本来、松戸に住んでいたときに行く予定だった中学校に進学することになったのでした。ですから中学に行くとかつての小学校のクラスメートが大勢おり、違和感は全くありませんでした。
小学生時代の同級生はと言うと知る限りでは一人だけ私立中学に進学したそうですが、大多数は公立中学に進学したようでした。
とにかく、小学校卒業から40年近く時は流れました。今では公立の小学校でも私立中学を受験する子はざらであり、珍しいことではなくなりました。大体、小学校受験だって珍しいことではなくなりました。中学受験向けの塾もあちこちにあります。私がかつて「私立なんて」と思い込んでいたくせにチビスケは「私立中学」に入学しました。
最近は公立中学まで「中高一貫」をうたうようになり、おまけに授業料無料化の追い風を受けて「中高一貫」の公立校の人気が急速に高まっており、そうした学校へは効率といえども当然のごとく入試が行われるようになり「地域の子供たちが普通に進学する学校」ではなくなりつつあります。
中学受験が良いのか、それとも義務教育は近所の公立校で良いのか?それは私には判りません。かつてほとんど全員がそのまま近所の公立校に進学した40年近く前とはあまりにも状況が異なります。公立校ならば様々なタイプの同級生と出会える一方、最近耳にする学級崩壊などに巻き込まれると目も当てられない状況になるとも聞こえてきます。かたや私立校のように平均化された人間の集まりの中で過ごすことが良いのか?という疑問もあります。
かつて同級生だったクロダ君は現在、何をしているのかは全くわかりません。真面目で勉強熱心だったからきっと大学も優秀な大学に進学したのだろうなあ、、、。
私自身は、当然のように公立中学を卒業し、高校は近所の公立高校に進学していきました。大学は途中で変わったりして「エスカレーター式」どころか「各駅停車で途中一旦下車つき」となってしまいました。果たしてそれが良かったのかマイナスだったのかはわかりませんが、とにかくそうして今の自分があるのです。
私みたいの人生を星一徹氏ならばどんなふうに評価するか興味深くもあります