院長のひとりごと

当初は、もう少し花鳥風月を愛でる話や、世相を風刺するようなことを書いていこうと思いましたが、いつの間にか情けない話ばかりになっています。かといって愚痴めいた話はいやなのでこのペースが続きそうです。


院長のひとりごと その 44

May.23.2005

ある日の出来事2


 それはある2004 年の9月の日曜日の出来事でした。通勤などに使用している車が車検となったのでディーラーに預けることになりました。普段ならば代車を借りるのですが今回は私の不手際から借りることが出来ず、車検の間は車無しの生活となりました。まあ通勤は250ccのスクータ(愛称:TB2号)で行けばいいのであるし、特に何も考えませんでした。

 その日はちょうど三鷹市の休日診療所準夜勤(18時ー21時半)の当番でしたので夕方からTB2号にまたがって休日診療所に向かいました。

 その晩は天気が良かったためか患者さんも少なく無事仕事を終えました。
 
 さて帰ろうと思いスクータにまたがりセルスタータをまわします。


あれ?エンジンがかかりません。

ガソリンは入っているしセルも快調に回っています。ところがエンジンがかかりません。家を出るときは何事も無く出発したのに帰りにはエンジンがウンともスンとも言いません。これがマニュアルミッションならば「押しがけ」という強制始動方法があるのですがオートマ車ではどうしようもありません。しばらく暗闇(医師会館の周囲は結構暗いのです)の中で四苦八苦していましたが、諦めることにしました。クリニックに置いてあるもう一台の往診用?の90ccのバイク(愛称:TB4号)で帰ればいいやと思い、ちょうど通りがかったタクシーを拾ってクリニックに向かいました。

 TB4号は実は四半世紀以上前に製造されたバイクで要するに骨董品に入るバイクです。学生の頃にタダでもらったものを修理していまだに活用しているというとんでもない代物です。しばらくほったらかしにしてあったものを開業前に整備し直して実用品として使用しているのです。(他に雑用に使う自転車もあり、これはTB1号と呼んでいます)

 こちらはセルなんてものはついていません。キック一発!でエンジンを始動し一路家路に向かいます。

 ところが悪いときには悪いことが重なります。あともう少しでお家に到着!というときに、いきなりエンジンから「ウワーン!」と大きな音がしたと思ったらみるみるバイクの力が無くなり、「プシューン!」と大きなため息をついてエンジンが止まってしまいました!

 何だかイヤな感じです。エンジンを再始動しようとキックをすると何だか手ごたえ(足ごたえ?)がありません。専門用語で圧縮がないといいます。それでも何とかエンジンがかかり再び走り始めます。それでもやはりおかしい!どう見てもパワーがなくエンジンの音も異常です。やがて再びエンジンが止まりました。そんなことを何回か繰り返し、とうとう始動不能に陥りました。

「おまえはもう死んでいる!」というセリフが頭をよぎります。

幸い家まではあと1キロもなかったので押していくことが出来ました。こういうときは小型のバイクに大きな体は有利です。

 近いといっても、そこは100kg近いものを押すのですから汗だくになりました。途中とおりかかった交番のお巡りさんもけげんな顔をして見つめていました。

 月のキレイな夜でした。美しい月を見ながらバイクを押していると疲れも忘れますと言いたいが、重いものはやっぱり重い!

 翌日は慣れない電車で出勤です。車だと30分で到着するところが電車だと通勤に1時間かかります。おまけに烏山からのバスは目の前で逃げられてしまい、ラッシュアワーだというのに次のバスまで15分待ちます。歩いていけば30分かかるし、あらためて不便なところにクリニックがあるもんだと感心?してしまいました。

 お昼休みにスクータを取りに行きました。再度セルを回すとあっけなく始動しました。昨日のトラブルは何だったのでしょう?。しかし運転すると何だか時々とまりそうになります。「これはやばいなあ」と思いつつ、戻りました。
 
 翌日は問題なく動きました。ところが水曜日の朝、再びエンジンがかからなくなりました。その日は大塚の癌研での仕事だったので再び電車で出勤。さすがに今回は大塚だけに電車でもスイスイ到着しました。やはり23区内は便利です。癌研での仕事も早く終わったので自宅にとんぼ返りして、再度始動を試みるとあっけなくエンジンがかかりました。
 今回はエンジンがかかりましたが、次回はダメかもしれないと思い急いで馴染みのバイク屋さんに行きました。「とりあえずあと半年は動くようにしてくれ!」と頼み修理してもらいました。原因はCDIユニットの不良(点火を制御するユニットです)とのことでした。部品を交換してあっけなく復活。「それにしてもいいかげんに買い替えてよ」と言われちゃいました。考えてみればこのスクータも中古で買って、そろそろ10年経ちます。 

もう一台の息絶えた往診用TB4号は取りに来てくれることになりました。
 それにしても車が無いときに限ってこんなトラブルに見舞われるなんて参りました。

TB4号の修理中はTB1号(自転車)もしくは徒歩で往診に行っていました。徒歩か自転車だとたいがい誰か顔見知りに会います。こうした往診もいいものですね。

 その後TB4号は無事復活しました。ヨカッタヨカッタ。でも請求書を見てため息が出てしまいました。なんのことはないオイル切れによるシリンダーの焼き付きで、シリンダー、シリンダーヘッド、ピストン等の交換となりました(よくこんな古いバイクの部品があったものだ)。

 さらにTB2号は2005年の4月についに廃車となりました。現在往診の主力はTB4号となっています。