院長のひとりごと

当初は、もう少し花鳥風月を愛でる話や、世相を風刺するようなことを書いていこうと思いましたが、いつの間にか情けない話ばかりになっています。かといって愚痴めいた話はいやなのでこのペースが続きそうです。


院長のひとりごと その 34

July.20.2004

大脱走

先日、久しぶりに荻窪に行く機会がありました。学生時代はよくウロウロしていたものですが、社会人になってからトンとご無沙汰しておりました。
 駅周辺は相変わらずゴミゴミしていますが、お店などは殆ど変わってしまったようでした。そこでもう20年近く前のことを思い出しました。季節はいつごろであったかは思い出せません。

 当時、ガールフレンドととある荻窪にあった喫茶店でお茶を飲んでいたときのことです(そういうこともあったなあ、、)。時間は夜7時頃だったと思います。さて帰ろうと思って会計を済ませて外にでると、どうもおなかの調子が悪い。そこでトイレを借りることにしました。そこは小さいビルで一階が喫茶店、2回は学習塾でした。トイレはなぜか2階にあるのでした。そこで2階に上がってトイレに入りました。彼女はトイレの前で待っていてくれました。やれやれ助かったとホッとして、さて帰ろうと1階に降りました。
 すると、、なんと
出口に鍵がかかっています!!。要するに外に出られません!!閉じこめられてしまったのです。あれれれ??よく考えてみると私がトイレに入っている間に1階の喫茶店は閉店し、そのまま戸締まりして出口にも鍵をかけて皆帰ってしまっていたのでした。通路の電気はついたままであり、まさか鍵をかけられたとは思いも寄らなかったのです。 

 私一人ならばいざ知らず、私と同時にガールフレンドも閉じこめられてしまったのです。彼女は一人暮らしではなく、ご家族と一緒に暮らしております。もし、ここから出られず、朝までここにいる羽目になるとすると「嫁入り前の娘が男友達と無断外泊!」ということになってしまいます。今ならば携帯で連絡を取るということも可能でしょうが、当時はそんなものはありません!これはひじょうにマズイ!!!

 たいがい中からは鍵は開けられるはず!と思って、玄関を見て見ると、カギ穴はあっても他には何もありません。そうです、鍵を使わないと開け閉めできない構造なのです。今でしたら、おそらくセキュリティシステムが動作して非常ベルでも鳴った可能性が高いのですが、当時はそんなものはありませんので何も起こりません。ぐるっと一回りしてみますが、当然ながら各オフィスは鍵がかかっており、どこにもでられません。果たして明日の朝まで閉じこめられてしまうのでしょうか?明日の朝に誰かが来るまで過ごさなくてはならないのでしょうか?そうして彼女のご両親から怒りの鉄拳でもくらうことになるのでしょうか??

 さてどうしたものかと考えるとトイレの窓が少し開いています。普通の窓ではなく、半開きするタイプの窓でした。外を見るとちょうど下は物置?の屋根です。脱出する場所はここしかない!狭い窓から大きい体を無理やり出すと、窓枠がメキメキときしみます。よっこらしょとどうにか外にでます。私が出られるのだから彼女が出られるだけのすき間はあります。彼女もどうにか窓から脱出しました。さて外には出たがこれからどうしたものか?と屋根から下を見ると結構高さがあり飛び降りるとけがをしそうです。大体スカートをはいている彼女に飛び降りろ等ととても言えません。幸か不幸か建物の裏であり、誰も見ておりません。壁についているパイプを伝わって降りようかと思いましたが果たして私の体重に耐えられるか?実行したら途中で壊れてしまいそうです。頭を冷やしてもう一度見回すと幸いにも別のところにはしごがかかっていました。なんだこれなら彼女でも問題はありません。それを伝って無事おりることが出来ました。あとは柵を乗り越えてさりげなく表通りにでることが出来ました。誰にも見られることなく脱出することが出来ました。ついでに彼女はミニスカートでなくて良かったなどと変な安心感があったりしました。

 聞くと彼女は閉じこめられたとわかったとき、朝まで待つのも仕方がないと開き直っていたそうです。これって冬山で遭難したとき、男は救助を求めて歩き回り疲れて死んでしまうのに対し、女はじっと耐えて救助を待って結局は助かるというリクツと同じようなものだなと妙に感心したものです。

 それにしてもセキュリティシステムの発達した今だったら「トイレに潜んでいた不審者」としてつかまっていたかもしれませんね。

 くだんのビルですが、先日みたときは建てかえをしたようで、そこには真新しい建物が違っていました。学習塾はありましたが、一階の喫茶店は料理屋さんに変わっていました。当時の彼女の消息も知りません。また一つ青春時代の思い出の場?が無くなったと妙な感慨を残してその場を去ったのでした。