院長のひとりごと

当初は、もう少し花鳥風月を愛でる話や、世相を風刺するようなことを書いていこうと思いましたが、いつの間にか情けない話ばかりになっています。かといって愚痴めいた話はいやなのでこのペースが続きそうです。


院長のひとりごと その 32

May.25.2004

プラモデル

 最近、チビスケの酷使?がたたり、チビのお気に入りの仮面ライダー555の変身ベルトがボロボロになってしまいました(まだ飽きていない)。壊れた部品をバンダイに注文してもいいのですが、ネットオークションをみると中古で同じ品が格安で出ていたので、補修用にと手に入れました。
 手に入れた品物は中古といっても、チビのものよりはるかにキレイでした。とりあえず、キレイな部品を集めてワンセット作り直し、それはチビに渡しました。手元にあるのは色がはげ落ちた傷だらけのものです。ちゃんと動作はするので捨てるのは勿体ない。ベルトは切れてしまったのでこれは修復不能。でも本体は色を塗り直せば結構いけるのではないかと思い始めました。555の絵本を見ると、当たり前ですが、本物?とおもちゃは色が異なるところがあります。正確に言うとおもちゃは色が付いているべき部分の色が付いていなかったり、塗りわけがいい加減だったりします。もし、細かく塗りわけると当然販売価格は上がるので「省略」されたの でしょう。せっかくならば細かい塗りわけを再現したい!!とムラムラとかつてのプラモ小僧の血が騒ぎ出しました。
 
 時間を見つけて吉祥寺の元々は手芸店、実はマニアックな模型屋さん?でもあるユザワヤというお店にでかけました。あるわあるわ色々な品物があります。ここでいきなり頭は
30年以上前に戻ります。


 当時私は純真無垢な小学生。プラモデルは好きでした。作っていると色々とやってみたいことが出てきます。
 まずは色を塗ってみたい。最初は絵の具を塗ってみましたが、絵の具ではプラスチックに色は付きません。どうしたらいいのかなと思っていたら、友達がプラモデル用の塗料というものがあるということを教えてくれました。
おこずかいをためて、塗料を購入しました。当時は千葉県松戸市に住んでいました。しかも松戸からさらに私鉄に乗り換えて行くはずれの場所であり(裏には牧場があった)、模型専門店などあろうはずがありません。近所の文房具屋さんで買った記憶があります。

 色を塗るのには筆が必要です。今では様々の筆がありますが、当時はそんなものはあったのかもしれませんが、小学生ごときに手に入るはずも無く、普通の絵の具用の筆を使っていました。スプレーもありましたが高価だったので、とても買うことは出来ませんでした。

 初めて色を塗ったプラモデルは、それこそ筆の跡が目立ったものでした。どうしたらうまくなるのであろうか?と考えます。そうしているとプラモ仲間の友達がプラモデルの上手な作り方といったような本を持っており、それを貸してくれました。
 塗り方の説明があります。「色の塗りわけには
マスキングテープが便利」とあります。でも私にはマスキングテープなるものが一体どんなものなのかを知らず、だいたい売っているところもありませんでした。せいぜいセロハンテープを利用するだけでした。

 「合わせ目を消すには
コンパウンドを使います。」とものの本にはあります。「そもそもコンパウンドって一体何?」周囲の人に聞いても誰も知らないといいます。大人に聞いても知らないといいます。模型屋さん(もどき)に行って尋ねてもわからないとのことでした。当時はせいぜいおもちゃ屋さんの一角にプラモデルが置いてあるていどで、普通は文房具屋さんの片隅に並んでいたのくらいなので、わかろうはずもありません。結局ずっと謎の品物のままでした。(要するに研磨材なのですね)

 さらに「仕上げ前には
耐水ペーパーを使う」とあります。これもわかりませんでした。紙やすりなら知っているけれど耐水ペーパーなんて知りません。近所の工具屋さんを何件か回ってみると目指す「耐水ペーパー」がありました。でも売られているのはプラモデルなどに使用する目の細かいものは無く、それこそタワシのようなものばかりでした。結局、耐水ペーパーなるものも私には「まぼろしの品物」となりました。

その後、中学生の2年ごろから、パタッとプラモ作りは止めてしまいました。引っ越しが多かったため当時作った模型は殆ど残っていません。

今、こうやって見ていると当時欲しくて仕方なかった品物が並んでいます。マスキングテープもコンパウンドも筆にしても模型用の様々なものが並んでいます。価格も大して高くありません。今の子供たちはちょっとおこずかいをためれば、私が当時欲しくても手に入らなかった品物が、すぐに手に入るんだなあとうらやましくなりました。(でも松戸の片隅では不明ですが)


 「でも当時は自分で工夫する楽しみがあったな、今のこどもはなんでもそろうので、そうした意味ではかわいそうなのかもしれない」などと、新聞の論説にでもあるような事も思いましたが、これって
負け惜しみですね。「これだけ道具がそろえば今ならば相当上手に模型をつくれるぞ!」いっちょ模型作りを復活させるか!?などと言う考えも頭をもたげます。

 ふと横にある模型雑誌を手にしてページをめくってみました。昔大好きだった飛行機の模型の特集記事でした。見てびっくり!!!。30年前と同じような内容かと思っていたらとんでもない!!細かい部分まで実に良くできているのです。とてもこどものレベルで出来るものではありません。例を挙げると計器盤のメータの目盛りまでも再現されているし、細かいパイプ類も表現されています。機関銃なども昔はプラスチックの棒だったのが、今はちゃんと中に銃口が開いています。やはり30年という年月は伊達ではなかったのですね。

 一瞬、再びプラモデルを作ってみようかなとも思いましたが、そういったハイレベルのモデルを見せられると、出ばなをくじかれて格好になり、冷静に戻りました。ガタガタのおもちゃを塗り直すくらいがちょうどいいやと思いつつ密かに楽しんでいます。