院長のひとりごと

当初は、もう少し花鳥風月を愛でる話や、世相を風刺するようなことを書いていこうと思いましたが、いつの間にか情けない話ばかりになっています。かといって愚痴めいた話はいやなのでこのペースが続きそうです。


院長のひとりごと その24

Dec.14.2003

悪夢


夢というものは不思議なものです。ここでいう夢とは実際に睡眠時にみる夢のことです。


どんなに理不尽な夢でも夢を見ているときには、それを理不尽とは思わず、そのままうけいれてしまうので、覚醒しているときとは全く異なる世界が出現します。

私の好きな漫画家につげ義春という漫画家がいます。この人は一時、夢を再現することを試みていたときがありました。その作品のひとつに「外のふくらみ」というものがあり、「外」がふくらんで家の中に入ってくるというものでした。現実では絶対あり得ないことなのですが、なんだか妙な不安感が迫ってくるようで、私は思わず身震いしてしまいました。また、別の作品では「夜」が部屋の中に進入して自分をつかむとか、どう考えても理不尽きわまりないのですが、妙な恐ろしさ、不安感で満ち満ちている作品があります。さすが天才といわれるだけあり、背筋が寒くなる思いでした。ただ、これらのシリーズは発表当時は評価は余り高くなかったようです。確かに「夢」の不安の表現ということが理解というか共感ができないと、単なる理解不能なシュールな漫画ということで、「変なマンガ」で終わってしまうでしょう。いわゆる「健全な」精神状態ではまず理解できないでしょう(この時期、作者の精神状態も不安定のようでしたが)。実際、その後、作者は夢を漫画にすることは困難だということで「夢」シリーズは止めています。

ところで凡人の私事に戻ります。私の場合はなぜだか疲れがたまってくると見る悪夢?というものがあります。


なんと情けないことに未だにテストのことでうなされることが多いのです。この数年多いパターンとしては


 1. 医師国家試験直前(あと2週間くらいしかない)なのに全く勉強していない。友人たちは着実に勉強しているのに自分は何もしておらず途方に暮れる。


 2. 医学部の6年生(医学部は6年制です。4年制ではありません)ぐらいなのに、なぜか他の大学の医学部に変わることを決意して大学を退学してしまう(当人は当然と思っている)。そのくせ全く勉強しておらず、おまけに願書も出し忘れているのに気づき、絶望的な気持ちになる。


 3. 医学部の6年の秋ごろになって突然退学を言い渡される(理由は不明)。同級生は皆、医師になっているのに自分だけが落ちこぼれる。


などといずれもテストがらみです。他にもバリエーションがありますが、大体こんな筋が多いようです。弁解がましくいえば、現実ではちゃんと国家試験に合格し、こうやってお医者さんとして働いています。なのに何でこんな夢を見るのか理解不能です。そもそもこんな夢を見始めたので研修医時代です。


 当時、朝の6時半ごろから夜は12時近くまで日曜日もろくに休めず働いて、疲れ切っているときにこの類の夢を見ました。このときはほんとうにうなされたのでしょうか?途中で目が覚め、思わずガバッと起きあがりました。気がつくと当たり前ですが周囲は真っ暗、しかし全身にびっしょり汗をかいていました。思わずしばらく呆然として、あらためて「自分はちゃんと医者の資格を持っているんだ」と言い聞かせ、ほっとしたのを覚えています。
その後、疲れがたまってくるとこの類の夢を見ることに気がつきました。大体体調が良くて気分が乗っているときはこのような夢は見ないようです。

それにしてもどの夢も内容としては不条理なのですが、夢の中ではそのまま受け入れてしまうので、とてもストレスになります。何回も同じような夢を見ているのだから、「これは夢なのだから心配しなくていいんだ」と思えるようにもなっていいのでは?と思うことがしばしです。
しかし医者になって15年以上経つのに未だにテストの夢を見るなんていったい何なのでしょう?それだけ当時はテストがストレスだったのかしら?でも学生時代にはこのような夢は見たことが無く、いまになってうなされるのも理解不能です。

それにしても、つげ義春氏の夢はどこかゲージツ的なのに私の夢はなんでこうゲンジツ的なのでしょう?