当院では認知症患者さんの診療を行っていますが、積極的に宣伝しているわけではないので認知症の患者さんが殺到することはなく、のんびりとやっています。しかし一人あたりの診察時間が比較的長くかかることもあり(すぐに終わる方もいますが)一日で診察できる患者さんの数は多くありません。
時間がかかることがある割には収入は増えないこともあり認知症患者さんを積極的に診察する医療機関が多くない一因であろうと思ったりもします。
以前は周辺の医療機関は認知症患者さんに関しては圧倒的にドネペジル5~10mg、イクセロンパッチ(リバスタッチパッチ)18mg, メマンチン(メマリー)20mgと目いっぱい使用されて来院される患者さんが多かったですが、最近は目一杯使うことに疑問を持った医療機関が増えたようにも思え、以前ほど目一杯使用している患者さんは減ってきたような印象も無きにしもあらずです(気のせいかもしれませんが)。いずれにせよ目一杯薬剤を投与されている患者さんが来院されると、まず薬剤の減量から当院では開始します。最近は認知症薬は全く使用しないケースが増えてきています。
ついでながら私は特別養護老人ホーム(特養)の配置医師もやっていますが、特養に入居される患者さんは目一杯認知症の薬を投与されていることが多いのは相変わらずです。言い方は悪いですが特養に入居されている方々は要介護3以上の進行した認知症の患者さんばかりで、すでに認知症の薬は効果が無くなっている方ばかりと言っても過言でありません。そのためか認知症の薬を漸減〜中止しても認知症に関しては変化はありません。
そうしたこともあり進行した認知症の患者さんに対しては認知症自体の診療というより、周辺症状、要するにご家族の負担をいかに減らすかということが中心となっています
他の医療機関で見落とされていると主なものは「てんかん」と「発達障害が潜んでいる」ということが最近気になっております。特に後者に関しては家族歴をよく聞いてみると、ご家族にそれらしき方はいらっしゃることがしばしあります。いずれも認知症薬はそうした病態には効果はなく、別のアプローチが必要とされます
それにしても認知症の診療は一筋縄にはいかず、マニュアルが存在しない一人ひとりに合わせた診療が必要だと思うこの頃です。