コウノメソッド徒然草

その17 発達障害と認知症

 

 

 最近、コウノメソッドの河野御大はいわゆる発達障害と認知症との関連に深く興味を持たれているようで、それに従って私も色々勉強させられることが多いです。
 そんなこんなで、「物忘れ」を主訴とした患者さんを診察するときに発達障害(多くはADHD)のことを頭に入れておくと案外「これは発達障害があるのではなかろうか?」というケースがしばしみられます。
 
 先日も某有名精神病院からレビー(DLB)に伴う「うつ症状」と診断された患者さんが来院されましたが、どうみてもDLBらしくない。声も大きく、歩行もスタスタ歩く。長谷川式スケールも24点と正常。一体どうしてこれがDLBなの?と思わせるケースでした。
 よくよく話を聞いてみると若い頃から「変わり者」とのことで、かつては市政に関わる仕事までされていたとのこと。本人は人づきあいで困ったことはないと断言されています(他にもイロイロ怪しい点がありましたがこれは割愛)。妙な違和感を感じ、これはやはりADHDであろうと考えております。「人付き合いで困ったことない」とのことですが、これは本人がそう思っているだけではないのでしょうか?などなど
 発達障害の方は逆にストレスに晒されると、「うつ」を発症しやすいそうです。おそらくこの方はADHDがベースにあって、それに「うつ」症状が加わったのではないかと考えております。
 現在はうつの薬はやめて発達障害の処方(アトモキセチン)を中心に対応しておりますが、今後の推移を見守りたいと考えています

 もう一つの症例は高齢女性で今まで一人暮らしだったのですが、物忘れなどの症状がでてきたとのことで親戚が近所のサ高住(サービス付き高齢者住宅)に入居させた方です
 「認知症の診察をしてくれ」と紹介されて来院。前医ではアルツハイマー型認知症ということでメマンチンが処方されていました。
 話を伺うと若い頃から片付けができず、部屋は準ゴミ屋敷状態。長谷川式スケールは18点。でも話をすると受け答えもしっかりしています。穏やかですが自発性に乏しいとのことでした。また入浴が一人で出来ず、付添が必要とのことでした。でも普段は小説を読んだりして過ごされており、その内容も把握しているようでした

 これはもう絶対単なる認知症ではないでしょう。
 発達障害に関連した認知症の症状と考え、アトモキセチンを処方しました。そうしたところこれが著効したようで、親戚の方は「こんなに効果があるとは思わなかった」とのことでした。入浴は一人では出来ないままだが、積極性が出てきて施設のイベントなど以前は参加もしようとしなかったのが今では積極的に参加するようになったとのことでした。
 まあご本人は「何も変わりないです」とおっしゃいます。
発達障害の場合は認知症でもそうですが、本人の自覚症状よりも周囲の評価が大切かと思われます。

他にも施設入居中の患者さんたちでも、入居するまでの経過、その他諸々の症状を勘案すると、おそらく発達障害、アスペルガーであったと思われる方々がいます。(社会人でいた頃は結構業績があったが、プライドが高く家族関係が芳しくない。もしくは男尊女卑傾向の方に多いような印象)
やはり発達障害を念頭に入れて治療を行うと改善の度合いがよろしいことがあります

大概のケースは前医では「認知症」と診断されていますが、背景に発達障害の可能性があると考慮されたケースは見当たりません(まあ最近クローズアップされた疾患なので今後は増えてくると思いますが)。

 さらに観察すると、ご家族もなんとなく、発達障害があるのでは?と思わせるケースがあります。
今までは単に「認知症」ということで診療に臨んでいましたが今後は「発達障害」が潜んでいる可能性の有無なども念頭に置きながら診療して行かなくてはならないと思っています