コウノメソッド徒然草

その15 介護のチカラ

 

 ワタシは特別養護老人ホームの配置医師(こういう名称なのです。「嘱託医」ではないのです)もやっております。特別養護老人ホームの場合には基本的に要介護4,5の方ばかりであり歩行はおろか会話もままならない方ばかりといった印象です。 さらにスタッフ不足でスタッフも疲弊しがちです。それでもスタッフは一所懸命ケアをしており頭が下がる思いです。

 認知症がすっかり進行しきった方が殆どであり中核症状を改善させることはもはや困難であり私が出来ることは、いわゆるピック症状が出ている方に対しお薬を調節すること。そして何より入居時に処方の整理をすることです。10種類以上お薬を処方されていることも少なくないために、時間をかけてゆっくりと減薬していくのです。
 減らすことにより不具合が出る場合もありますが、そのときは元に戻せばよいだけです。多くはお薬を減らしても症状が悪化することは少なく、逆に認知症のお薬、精神科のお薬、眠剤などは減薬〜中止をすることにより改善が見られることも少なくありません。
 
 お薬を減らして最終的に残ったのは便秘薬のみとかお薬が不要になった方もおられます。

 この際、大事なのは患者さんに毎日接している介護スタッフなのです。お薬を変更することにより、患者さんにどのような影響を与えるかを見てくれるのは介護スタッフなのです。医者の対応が適当なものなのか、そうでないかを見極めるのは医者では無くて介護スタッフなのです.

 さらにワタシは有料老人ホームでも訪問診療をしております。そのホームに「認知症患者さんへのケア」に関して鬼のようなナースがおります。全ての情熱を捧げ、あたかも「巨人の星」に出てくる「星一徹」(ちょっと古いか)の様な方です。

 この方は本当によく患者さんを観察しており、的確に病状の変化を報告してくれます。お薬を変えてみると、その結果どのように変化が見られるかも逐一報告してくれますし、さらにこちらに「あれはこうしたほうが良いんじゃないですか?これはあまり効果がないみたいですよ」などとご注進くださいます。それがまた的確なものなのでワタシは「フムフムナルホドナルホド」と相づちを打つばかりです。
 そんな感じでワタシはそのナースの「指示に従って?」処方を出すばかりになっているとも言える状態なのです。
 
 2週間に一度患者さんの顔を見て診察するワタクシよりも毎日きめ細かく患者さんの様子を見ている介護スタッフの方が状況を把握しているのは当然といえば当然です。
 また在宅の場合は患者家族から日常の様子をきめ細かく聞いているケアマネ達の方が状況を熟知しているのもこれまた当然のことなのです
 
 医者はそうしたスタッフからいかに状態は聞き出し、対応を考えていかなくてはならないのです。そうやって考えるといかにスタッフの存在が大切かひしひしと感じることが出来ます

 先述したホームのナースなんて、あまりにも仕事が出来るものだからワタシは殆ど言いなり状態になっています。優秀なスタッフがいれば医者なんてオマケみたいなものかもしれないなあと思う今日この頃でございます