分類不能項目
Vol. 57
2013. February.5
蛇を食べる
時は昭和の後半、学生時代。バイク好きの私はしばし上野に行くことがありました。当時上野駅の浅草口周辺は一大バイク街となっており、バイク好きの私はしばし通ったものでした。
バイク街に向かう途中、気になるお店がありました。その名は「救命堂」。小さい店舗でショウウインドウには無数の蛇がうごめいていました。「こ、これって蛇屋?」最初は何がなんだかわからず「蛇のペット屋さんなのであろうか?」などとも思っていました。いつしか、そこが「蛇を食べさせるお店」であることを知りました。しかし学生である私には、その狭く薄暗い店構えはなんとも敷居が高く入ることは叶いませんでした。
時は流れ30年以上たちました。ネットで未だに救命堂が健在であることを知りました。ネット記事を読んでいると救命堂は「蛇を食べさせる食堂」ではなく「一種の健康(精力?)食品として提供する場所」ということがわかりました。さらには値段も5〜6千円もするということも知りました。
なんでも食べたがる、いわば「悪食」の私は以前より「蛇を食べてみたい」という欲求があり、ずっとずっと抱き続けていました。
このたび、ようやく実行することが出来ました
さて、久しぶりの上野駅。すっかり改装され以前の薄汚い「地方からの列車の終着駅」というイメージは全くありません。それでもところどころに昔の面影を見つけるとホッとしてしまいます。
駅を出ると以前はバイク屋ばかりだったのが、バイク屋そのものが見当たりません。時代は変わったのですね、なんて歩いているとありました、ありました。
おお!あった、あった「救命堂」です!
おお!以前のままのたたずまい
あいかわらず暗いです。蛇がうようよしていたウインドウには蛇はいません。果たして営業しているのでしょうか?
思い切って扉を開けると、思った以上に狭いお店です。二人掛けの机が一つに4人くらいしか座れないカウンターがあるだけです。
親父さんに「はじめてなんですけれどいいですか?」と挨拶するとニコニコと「どうぞどうぞ」とのことです。きっと気難しい親父さんかと思っていましたが、とっても気さくな話好きな方でした。
ウインドウは何もなし。のれんもかかっていません(店内に置きっぱなしだった)
マムシの剥製?/棚には特性の「まむし蒸し焼き」や「マムシ酒」があります
店内にデーンと鎮座しているのは「粉末」を作る機械だそうです
右側で蛇をさばいています。コンロはいわゆる普通のガスコンロのようです
「今はハブしかありませんがいいですか〜? 6000円しますが」とのこと。
最初、マムシを食べたいと思っていましたがマムシは7月頃にならないと入らないとのことでした。他にシマヘビもあるそうですが、それは4月にならないと手に入らないそうです。
まあなんでもいいや、それにあらかじめ値段を言ってくれるのは親切です(でも高いなあ、しかしこれは食事ではなく「薬膳」みたいなものと思えば妥当なのでしょう)
床においてある器からハブをハサミのようなものでつまみ出して見せてくれます
この中に蛇が入っています(当然生きています)
上においてある道具でヘビを掴みます
「写真をとってもいいですか?」と尋ねると「どうぞどうぞ」とのことなのでありがたく写真を撮らせてもらいました
ハブの頭を大きなクリップのようなものではさみます
ハブの頭を切って生き血をワインに入れて出してくれました。アルコールがダメな私ですがこれを断るのは野暮というもの。飲んでみると別に血生臭くもなんともありません。水で薄めたワインのような感じです。
頭を落として生き血をしぼります
ハブの生き血ワイン割(右は単なる水です)
調理中もよもやま話が続きます。まあもっとも私がおしゃべりだということもあるのでしょうが
ハブの肉をミンチにしてハンバーグのようにして調理していました
小さくてわかりづらいですが奥にハンマーを横に据え付けたまな板のようなものがあります
下にハンマーでヘビをミンチにしている動画を置いたつもりですが、うまく動かないかもしれません。
調整中です
このよう機械でミンチにしていきます
定食屋ではないので「ご飯と味噌汁」はつきません。ありゃまあ意外と少ないのですね。
さて味は?と食べてみると、ホント あっさりしています。鶏肉と豚肉を足して2で割ったような味、といえばいいのでしょうか?骨ごとミンチにしているのでゴリゴリした感じがありますが柔らかくて癖のない味です。親父さんが醤油をたっぷりかけてきたので醤油の味が目立つくらいです。でもおいしいです。いくらでも食べられますね。おかわりしてもいいくらいです。毎日食べても飽きない感じです。残念ながらあっという間に食べ終えてしました。
見た目は普通の焼肉定食風
すると親父さんは食べ終えた更にお湯を注ぎました。「蛇の油が出ているから飲むといいんだよ」とのことです。なるほどなるほど、美味しくいただきました。
ハブスープ?おいしいです
他にお客さんがいないこともあり、しばし親父さんと話し込んでしまいました。親父さんも話し好きなようです
話によれば、蛇を取る人が高齢化して少なくなっており、現在ではマムシをとってくれる人は5〜6人しかいないそうです。そのため供給不足になっており、時期になっても十分に提供できないそうです。もともと蛇をとるのは農家の方々だったそうです。なんでも一時期、中国から「安い蛇」が入ってきて、そのため国内で蛇を取る人が減ってしまったそうです。やがて中国からの蛇の輸入がなくなったそうですが(原因は聞き忘れた)、その間にかつて蛇をとっていた方々は引退してしまい、それを引き継ぐ人がいないために「蛇取り」が減ってしまったそうです。
脇の水槽に「ヒル(蛭)」が無数に入っています。これはなんでも「悪い血を吸わせる」ためにあるそうです。この「ヒル」にしても今はすべて「中国からの輸入品」だそうです。かつては宮城、福島の農家の方が10年くらい前まで取ってくれたそうですが、格安の中国産のために商売にならなくなってやめてしまったそうです。親父さんの言うには「国産のヒルのほうが品質が良い」とのことですがヒルでも、そんな違いがあるんだなんてちょと不思議な気持ちでした。
しかし「ヒルを輸入」なんて、なんだかすごいです。でも生き物なので特に夏場は購入した一割が死んでしまうので「儲かりゃしませんよ」とのことでした。
瓶の中にはヒルがうようよ
まあなんやかんやでしばらくお話をさせて頂きました。味はとっても満足でした。安いものではないのでしょっちゅう食べられるものではありませんが、是非また再訪したいお店でした
4月になったらシマヘビが入る予定だそうです。そうしたらまた来ようかな♪
表の看板には「まむし、すっぽん」とありましたが、現在は「すっぽん」は取り扱っていないのかな?
で、食べたらなにか効果があったか?と尋ねられると「わからない、でも楽しく美味しかった」と答えておきましょう