当院における湿潤療法の実際
case5 大学病院で皮膚移植を勧められていた、あんかによる低温熱傷(39歳男性)
あんかで下腿に低温熱傷を生じた例です。低温熱傷は意外と手間がかかります。最低でも2ヶ月はかかると思ってください。この例は大学病院で治療を受けたそうです。消毒と抗生物質軟膏を使用し、切開処置なども受けたそうです(詳しい経過はよくわかりません)。大学から「皮膚移植」を受けることを勧められたこともあり、湿潤療法を試してみたいという希望があり当院を受診されました。
2010年3月1日、当院初診時。ガーゼをはがしたときに出血が見られました
さて、どうしたものかと考えましたが、まずは水洗して感染がなさそうなことを確認し、まずは白色ワセリン(プロペト)を塗布した上にサランラップでラップしました。
3月4日、こんな感じでラップしています創の周囲が白っぽくなっています
大学病院では入浴は禁止とのことですが当院では毎日お風呂でよくお湯で流してくださいと指導しています
仕事が忙しく、連日の受診は無理なのでご自身で処置をしてもらっています
左が3月11日、右が18日の状態です。本来はプラスモイストという素晴らしい貼付材料があるのですが、安価でないためしようを控えました。その代わりと言っては何ですが、穴あきラップ&紙おむつのような吸湿剤を使用したりもしています
3月25日、周囲から上皮化が進んできているのがお分かりでしょうか?
4月1日、右17日
左5月13日、右28日。28日の時点で創面はすべて上皮化しました。ここで一応通院終了。あとはプロペトで適宜保護してもらうことにしました
6月13日に別の用事で来院されたので足を見せてもらいました。痕は残っていますが痛みなどはないとのことでした。約3ヶ月かかりましたが、ご本人は「皮膚移植を受けることを考えたら、湿潤療法のほうが良い」とのご感想でした
その後
8月31日に来院された際、見せてもらいました。機能的には問題ありませんが瘢痕が残っています。「傷跡もなくキレイさっぱり」とは行かないようです